~5分でわかるカンタンなピアノデュオの始まりと当時の楽器、調律事情~

当時の楽器、調律事情

 

 どこかで御覧になったことがあるでしょう。モーツァルトと姉ナンネルが連弾をしている肖像画です。現在のピアノとはちょっと趣が違いますよね。

鍵盤の色が違う・・?

華奢な気がする・・?

 

モーツァルトが生まれたのは1756年。生きていた時代はバロック時代から古典派時代に入っています。

 この頃の鍵盤楽器はオルガン、チェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノが主流でした。

教会では神様に祈りを捧げるミサの中で、パイプオルガンが演奏され、一部の階級の中ではチェンバロ、クラヴィコード、フォルテピアノが楽しまれていました。

 

モーツァルトは幼い頃にチェンバロを学んでいましたが20代に入ると当時最先端のフォルテピアノに興味を持ち、これを使って作曲をしていました。モーツァルトの時代は鍵盤楽器が次々と新しく技術を取り入れチェンバロからフォルテピアノへの移行時期だったのです。この肖像画のピアノもフォルテピアノです

  どんな音だったんでしょう・・聴きたくなりますね。

 

娯楽の少なかったこの時代、家庭内ではクラヴィコードやフォルテピアノで連弾したり、チェンバロで弦楽器、歌とのデュオで楽しむこともきっと多かったことでしょう。

当時はエジソンもまだ、生まれていないので照明はロウソクの光。ぼわんと薄明かりの中で楽しんでいる当時の音楽家達。フォルテピアノの音量は現代のピアノのように大きくはないんです。クラヴィコードともなると、床にピンを落としたほどの繊細な音なんです。小さな部屋で小さな声で耳を澄ませて・・・現在のピアノとはちょっと趣きが違います。

 当時のフォルテピアノは、今のピアノと比べると音量も小さく素朴な音でした。

       

      しかしいぶし銀のような独特な世界を醸し出しています。

 

 

「いぶし銀のような独特な世界」を醸し出す要因は何なのでしょう???

 

 これは楽器構造や素材の違いが主な要因ではありますが、調律法も大きな要因でした。当時は古典調律と呼ばれる調律法で現代の平均律調律法とは違う調律法だったのです(当時はそれが現代調律だったのですが・・)

 

古典調律の主な調律法には数種類あり、作曲家によって好みの調律法があったようです。調律法についての論議で当時は賑わっていたのでしょうね。

また、この頃の鍵盤楽器は華奢に出来ているためすぐに調律が狂うので、毎日自分で調律するのが日課でした。バッハは弾く前にはさささーっと15分ほどで調律を済ませたそうです(弟子のフォルケルによれば・・)

       チェンバロは現在でも演奏者自身で調律するんですよ。

 

古典調律は調によって色彩が変化するので、作曲家は調を決める際には調律法をも考えに入れて「この調にすると、この音とこの音は唸りがでるので素敵に響きあう・・三度の響きがこの調では綺麗にならないから別な調にしようかな・・不安定な美しさがでる調にしようかな・・」などと決めていたのでしょう。作曲をするのに音律の勉強も必要だったんですね

 

古典調律は19世紀までは頻繁に使用されてましたが、今ではあまり出会うことがありません。しかし、とても美しい響きを持つ調律法です。

 

一方平均律が主流になるのは20世紀に入ってから。それもチューナーの発明によって広まったようです。平均律の考え方はバロック時代からあったのですがギターやマンドリンでしか実現することはできませんでした。コンパスを使ってオクターブ12音を精確に等分したようですよ。鍵盤楽器では事実上不可能だったんです。

 

今のピアノは大きなホール用として19世紀後半に完成したものです。豊かな音量を確保するために、ピアノ線は1本~3本張り、強い張力にも耐えることができるようにフレームは金属を使用するようになりました。そしてハンマーはフェルトになり千変自在な音色を楽しめるようになりました。

                   

連弾について

家庭での娯楽として始まった連弾ですが、モーツァルトの連弾曲を連弾の始まりとすれば、今年(2015年)は丁度250年目の年ということになります。250年もの時を経て、今では家庭での楽しみと同時にコンサートでは芸術作品として各地で聴くことが出来るようになりました。

 現在は連弾(一台四手)と二台のピアノ(二台四手)を総称して「ピアノデュオ」と呼んでいます。

 

ピアノデュオはソロとはまた違った世界が広がります。四本の手が醸し出す音を二人で聞きながら、リアルタイムで音量や音質、響きなどを調整しながら作曲家と二人の世界を表現します。

 

二人の駆け引きまで聴いて頂けると楽しみは倍増します! (チハル記)